コラム 3D の眼差しVol.3
2002年11月作成


相良です。
今回はクワッドのカイトチューニングについてです。

僕のフライトスタイルはあくまでも「スピード」と「パワー」に重点を置いてます。
この条件をクリアするために、当然ながらそれに見合ったカイトを使ってるわけですが、それでも満足していないのでチューニングの必要性が出てきた訳です。
但し、このチューニングはあくまでも僕のフライト条件を満たすものであって、これを真似したからうまくなるというものでもありませんし、カイトの性能を100%出すものでもありません。
僕のフライトスタイルを見て、共感できる方だけが試してみてください。
このチューニングは、明らかにカイトに負荷をかけているので、すぐ壊れるかもしれません。また、それについての保証は一切出来ませんのでご承知願います。

まずは「SHOCK WAVE」です。
このカイトは、買ったときには本当にどうしようかと思ったくらい、気に入らなくて苦労しました。
しばらくは使わずにいたのですが、それまで使っていた「REV1.5」がどうしようもないくらい揚がらなくなって悩んでいたので、しかたなく使い始めました。


--- REVOLUTION KITES SHOCK WAVEの特性と傾向・対策 ---
  • 1998年に発売され、従来までの正確性を求むフライトから、スピード・アクション重視として世に出たカイト
  • 最大の特徴は、リーディングエッジに採用された新設計のロッド「スーパーリーディングエッジ」にある
  • 従来までの軽量化の理念を覆したこのロッドは、今までのロッドとは比較にならないほどの強度を持つ
  • この強度がこのカイトの性格をもっとも特徴づけることができたといえる、それを証明するのが同時期に発売された「REVOLUTION 1.5 SLE」である
  • 以前のロッドであると、強風になればなるほどリーディングエッジがゆがみ、本来の平面カイトから立体に変化し、コントロールがままならない
    また、微風だからといって2Wrapロッドを入れると、その影響がさらに顕著に出る
変形
ここで補足説明をしますが、カイトは完全な平面だけでは全く飛びません。
ウインド〜ウィンドウはドーム型をしています。これに沿った形でないと、風がうまく流れてくれません。
この形に縦のシャフトを入れることによって、下へと風を流しています。
スーパーリーディングエッジは、この理論を元にしてもっとも風を受けつつ、さらに強く風を流すことができるロッドといえます。
これにより「REV1.5」は強風でも全く影響を受けず、更にポテンシャルの高いカイトとなりました。
風の流れ
しかし、「SHOCK WAVE」になると、次のような問題が数多くあります。
  • 微風では全くあがらない。
    これはブライドルに原因がある。あと、重量も一因である。
  • 強風だと強く引きすぎる。
    これは効率よく風を受けすぎているせいである。REVだとメッシュがあるため、うまく風を逃がしている。
  • ターンさせると滑る傾向にある。
    これは「SHOCK WAVE」の特徴の一つである。縦シャフトを4本にしたことにより、より下方へ風の流れを強調している。従ってよりシャープな操作が要求されるといえる。
    REVシリーズとは操作が違うのである。シナジーシリーズに若干近いかもしれない。
以上の点を考慮すると、まずブライドルを早急に改善すべきと考え、調整の経緯と結果を記します。
  • 石狩新港 風速5〜7m/s(推測)
    強風でのフライト。脇をホールドしないとストレートに飛ばない、しかも風が強くないとうまく飛ばない。
    また、リーディングエッジが曲がらないとカイトが走らないことに気づく。微風でも曲がるようにしないといけない。さらに、ハンドル手前のライン調整も必要だ。

  • 旭川忠和公園 風速1〜2m/s(推測)
    ブライドルの長さを自在に調整できるようにした。テストにより、だんだん飛ぶようになってきた。
    このフィールドは内陸で、山も近くにあるためウィンドウィンドウが極端に狭く、下の方の風がないため「REV1.5」ではよく飛ばない。
    ところが「SHOCK WAVE」のスピードは強風時とさほど変わらない。「SHOCK WAVE」のすごさを感じるが、着地からスタートするまでが遅い。
    今回はトップサイドを縮め、センターを伸ばした。

  • 石狩新港 風速0〜3m/s (推測)
    風が安定しない。
    SHOCK WAVE」は、ものすごい音を出しながら飛んだ。しかし、風速1m/s以下になると全く揚がらなくなる。調整してもこれが限界のようだ。
    360°をやってみると、一度加速すれば走ってくれるようだ。ストップをやってみると止まっていられない。重くて落ちてしまう。
    ポイズナイビーもできるようになったが、どうしてもボトムにブライドルが絡んでしまう。そのため、サイドとボトムに絡み止めのボウラインをつけてみた。思った以上に効果有り。
    試しに「REV1.5」を飛ばしてみる。ちなみに「REV 1」のセイルを切ってDUALのロッドを入れたものだ(以前の「REV1.5」は微風では完全に揚がらなくなってしまった)。
    これが面白いくらい揚がる。しかし、全くスピードがないが、良く止まっていられる。非常に対称的な仕上がりになってしまった。

  • 石狩新港 風速4〜7m/s(推測)
    試しに曲を入れてみた。今までの曲で合わせてみるが、ステップターンが遅いため思うように合わせられない。構成から作り替えなければならない。
    ただ、カセットターン(注1)は何とかなりそうだ。スパイク(注2)も強烈に決まる。
    また、ストップしてからのスタートがどうしてもワンテンポ遅れてしまう。曲のイメージが一新しそうだ。
    注1:カセットターン
    僕のよく使うターンで、要するにスピードがあって切れのいいターン。バレーでよく使う。
    注2:スパイク
    これもよく使う技で、「これでもか」という位思いっきりトップスピードでチップランディングする。本当によく決まると地面に刺さって抜けなくなるくらい。

  • 旭川忠和公園 風速1〜2m/s(推測)
    どうもブライドルが伸びてしまった気がする、以前の精細さが感じられなくなった。セイルもシワが寄ってきた。
    このチューニングは、カイトにかなり負担をかけているようだ。
    それと、ホバリングや、バックが安定しない。ブライドルを計り直してみると、やはりずれていた。ブライドルラインを200ポンドから250ポンドのケブラーに変えた。

  • 石狩新港 風速0〜1m/s(推測)
    全く風がない。先日買ったライン50ポンドを使ってみた。
    REV1.5」は良く揚がる。ただしスピードがない、バレー演技にはかなり苦労しそうだ。
    SHOCK WAVE」は、0.8m/sくらいが限界だろう。スピードは出るが、細かい演技はやはり苦手だ、規定は無理だろう。

  • モエレ沼公園 風速3〜5m/s(推測)
    この公園は非常に狭く、風も巻くためフライトフィールドとしては最悪、しかも隣は林だ。
    ラインは80ポンド26mがベストだ。風が巻いてもあまり関係がないのが分かったが、連続でダッシュすると結構つらい。どうしても下がってしまう。

  • 石狩新港 風速2〜3m/s(推測)
    ブライドルラインが切れてた(どうも遅いわけだ)。
    250ポンドから300ポンドにアップした。上の二本に負担がかかっているようだ。

以上の結果を基に、下図に示すブライドルでほぼ決定しました。
ラインは80ポンド26mがベスト、微風用に50ポンド26mと言うセッテイングになりました。
ただし、カイトにかかる負担が非常に大きく、セイルのゆがみも激しいため、2〜3シーズンが限度と思われます。
個人差にもよりますが、透明部分の破れ、セイルの破損、リーディングエッジ部の破れ等が出てきます。更には、強風では非常にテンションが高くなりすぎコントロール不能に陥りやすいため、強風時は「SUPER SONIC」の使用を薦めます。
こちらはほとんどノーマルでも非常に完成度が高く、調整もなくそのままいけるでしょう。

操作の方はターンが非常にシビアで、Dual Line Kiteのように失速させることなくフォワードを入れながら、ワンショックで入れるという高度な操作が必要です。
ただし、これによりREVシリーズよりも格段に早いターンが可能です。規定も、テンションを逃がすことなくフォワードを押さえながらだと、かなり安定することが判明しました。この際はラインを30mにする事を勧めます。
ブライドル
総合的に「SHOCK WAVE」は規定、バレーともに「勝つための」カイトといえます。
ただし、それには今まで以上の練習と研究が必要です。
また、あまり勧められませんが、1m/s以下でフライトしたい場合はリーディングエッジを入れ替えると、よく飛んでくれます。センター4ラップ・エッジ3ラップが一番軽くなります。
しかし、判断を誤ると本来の性能を損ねてしまうので注意が必要です。なお、弱・中風時は縦4本のロッドは2ラップの方がよさそうです。
BLAST
次に「BLAST」です。色々試す機会がありしましたが、僕のフライトスタイルと合わず、購入は見送りました。しかし、僕のチューニングにとっても大きな改革となりました。
まずブライドルのポイント変更で、更にウインドレンジが増し、違和感なくウインドエッジでの操作が可能になってます。
また、この大きさでの[SLE」ですが、ULバージョンになってますし。これは付属のロッド(HW)と比較すると分かりますが、より、しなりやすいロッドを使うと風のホールド性が増し、微風での操作が可能となってます。
これと同じことを、僕はブライドルで無理矢理やった訳ですが、ロッドを替えることでより素直な飛びになります。
このカイトは初心者でも安心して飛ばせて、なおかつ規定が得意と考えました。

これに近いのが「SUPER SONIC」です。だから風があれば、「SUPER SONIC」はチューニングしなくても、そこそこ操作しやすいのです。
但し、それでもホールド性では「BLAST」の方が断然上です。
そこであえて今までのデータをフィードバックしつつ、このニューカイトの技術を取り入れてみました。
ブライドル2
これで、スピードが更に増したにもかかわらず、安定性もあり、キレも十分です。強風時の対応も可能になりました。
以上で僕のクワッドチューニングは終わりですが、未だ発展段階なのでこれからも進化し続けるでしょう。

チューニング時の心得としては、ノーマル段階の状態をよく調べることです。
そのカイトの特色をよく考えて、どういった方向性を求めていくかをしっかり考えましょう。本来の性能を失っては本末転倒になりかねないからです。
また、最初の状態をよく覚えることです。僕の場合はノーマルのロッドやブライドルを全てとってあり、チューニングの記録も取っています。方向性を見失ったときすぐに原点に立ち返るためです。
更には、様々な方から聞いた情報はあくまでも情報として聞いてください。その通りにしたからといってその方には最良でも、自分にとっていい結果になるとは言い切れないからです。
これで、更に自分なりに進化できるかもしれません。フライヤーとして飽くなき追求をしてください。

筆者紹介: 相良真市(shin)
北海道旭川市在住
コメント: スポーツカイト、特にクワッドラインのバレー種目では、"相良スタイル"と呼ばれる激しくキレの良い動きで独自の世界を展開し、他のフライヤーにも大きく影響を与えている
RETURN